Director

みんなが輝ける作品を

 

山口:こんにちは。今日は岩瀬さんの演出についてお聞きするわけですが、岩瀬さんは元々音楽家ですよね。

岩瀬:そうです。私は子どもの頃から音楽が好きで、現在も続く「岩瀬よしのりと鬼剣舞」の前身である「フォークグループ鬼剣舞」を結成したのは16歳の頃です。結成したと言っても自分から言い出したのではなくて、かなり年上の先輩に誘われてだったので「結成」というよりは「結成に参加した」と言った方がいいかもしれません。当時はいわゆる「セミプロ」と言って、高校の制服を着たままホールに駆けつけるというような生活でした。

山口:なるほど。それがどうして演劇と結び付いたのですか?

岩瀬:演劇との最初の出会いは、演出家の”ふじたあさやさん”の演出で「楽屋」というお芝居でした。演劇アカデミーの卒業公演というもので「テーマソング」を作曲したんです。たしかシャンソンのようなメロディで、今でも歌えますよ。当時はまだ演劇にはあんまり関心がなくって作曲後も「これでいいのかなぁ?」と不安でしたが・・・ただ、そこから劇音楽の依頼が急に多くなりました。これには地域の文化を育てたいという”ふじたさん”の思いもあったのだと感謝しています。

山口:そこから、演劇との付き合いが始まったわけですね。他にはどんな演出家とお仕事をされたんですか?

岩瀬:小田健也さんや関谷幸雄さん・高見ノッポさん(ノッポさん)などですが、地域の劇団・児童劇団も入れるとかなりの演出家と仕事をしました。特に深いお付き合いだったのが「人形劇団むすび座」の創立者だった丹下進さんです。よく「私は演出家ではありません、観客の代表です。」と言ってられたのが印象的です。

山口:観客の代表ですかー。その影響ですか?岩瀬さんの演出が、役者さんから演技を引き出すようなスタイルなのは?

岩瀬:演技というのはある意味「嘘」をつくことなんですよ。でも、心に「誠」がないとただの「嘘つき」になってしまいます。ですから役者から「誠」を引き出すことが大切だと思うのです。「心に愛がなければ・・・」というキリスト協の教えをラジオで聞いたことがありますが、少しぐらい下手な演技だとしてもそのほうがいいわけです。広沢虎造の浪曲「石松代参」の中でも大政が石松にこんなことを言う場面があります。「石、お釈迦様が何と言った。本当のことを喋ったために人がとんだ災難に遭った、そういう本当は役には立たない、そういう時には嘘をつけ。嘘も方便、所によっては宝になる。」演劇は「宝」になるべきものなんです。それから役を演じる上ではもうひとつ「思いやり」というのも大切なことですね。「他人を思いやる想像力」ですね・・・

山口:想像力・・・

岩瀬:そんな風に「引き出す演出」というか「共に創る演出」というか、最近よく言われる言葉で表現すれば「ファシリテーター的」(進行役)な演出をしていると様々な発見があって「あぁ、この人のこの能力はこの場面で生かすと面白いなぁ」と思うと台本も少し変えてしまうこともあるんです。アマチュアの方の場合、演劇経験がなくてもみんな「生活者としての表現力」は持っているわけですね。ですから充分にその力を引き出すことができれば、かなりの作品ができるはずなんです。プロの方の場合でも基本的には変わらないんじゃないかな?そして、それをつなぎ合わせてどんな作品ができるか?というのが「演出家の醍醐味」ではないかと思います。

四日市ラプソディ練習風景

山口:今日はお忙しい中、ありがとうございました。


岩瀬よしのり 作品代表作(抜粋)

ミュージカル
●恐竜はなぜ滅びたか
●ききみみずきん
●なかよしーずのつくってあそぼ
●私は地球が大好きだ
●四日市ラプソディ 他

コンサート
●佐藤陽子ヴァイオリンコンサート
●21世紀ムジカセラミカコンサート
●チ・ボラグ 馬頭琴コンサート『モンゴルの調べ』
●ロストレスアミーゴス『フォルクローレコンサート』
●ニイハオ中国歌舞団『悠久の調べ』
●メリー&伊藤昌司カルテット『約束の出会い』
●Kintoki「マイムであそぼう」
●笠木透コンサ-ト『私の子ども達へ』他